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藤本寿徳

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説明のつかないこと
 今日放送の新日曜美術館は、日本画家・高山辰雄について。サブタイトルは「宇宙にふれたかったひと」。不思議なサブタイトルに惹かれました。

 人間の本質を絵を通じて探求しつづける求道者のような作家の思索が、作家自身の言葉や雅楽師・東儀秀樹さんや聖路加病院理事長・日野原重明さんの読み取りとともに綴られていく。 自分の中にある宇宙に対峙していく超内向的な作家活動が、言葉を使わなくても、自分以外の外部へと絵画を通して伝わっていく。「言語化できない真理を表現する。」そのような高山さんの絵画に崇高なものを感じました。

 建築は、とかく社会的な存在ですから説明を必要とします。説明することで社会と繋がるきっかけを持ちます。それは、機能や環境への配慮であったり、クライアントの要求であったり、現代の倫理的な価値観にどう応えたかというものです。

 説明可能な部分だけでなく、僕は高山さん絵画のような「言語化できない真理」を建築に込めたいと考えています。
 住宅というものは、その中に住む家族や人間の活動や心の動きを規定する強さを持っています。いかにそれを希薄化しようとしても、建築に囲われるという状態を無にすることはできません。また洋服や車と違って簡単に着替えたり、買い替えたりすることもできません。

 そのような建築の性質のなかで、何を建築に求めていくか、どうあるべきか。思いは建築を超えて、人間の存在や精神、宇宙の営み、過去未来まで広がります。
 建築は説明のつかないものを空間化することが可能です。建築を体験して感動した経験を持つ方にとっては、感動とはそのようなものとの出会いの証だと思います。自分の手がけた建築にも、不完全な状態でもその時悩んだことがわずかでも人に感じてもらえて、読み取ってもらえるような要素が浮き上がってきて欲しいものです。

 依頼主と敷地に向き合うことでしか、説明のつかない部分は姿を現しません。依頼主の言葉や反応によって自己の内面がえぐり出されていくのです。「三原の家」は設計に時間がとてもかかりました。多数の案の検討を通じて、案はストレートに単純な形へと姿を変え、最後はこれしかないと思うまでになり、単純化への不安はいつのまにかなくなっていました。
 依頼主である大石さんとのキャッチボールを通じて、このような「沈黙」の空間性へと到達できました。自分で撮影した写真には、設計の思いが写し込められたと思っています。

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13:06, Sunday, Dec 23, 2007 ¦ 固定リンク

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