八軒屋の家
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
photo by Kazunori Fujimoto

「八軒屋の家」

 かつては、この周囲に八軒の家しかなかったことに地名が由来する市郊外の敷地である。近年では周囲の田畑の区画も徐々に宅地へと変わりつつあるものの、周囲には空間のゆとりも十分残り、空の広がりも山並みへの眺望にも恵まれている。

 家族4人のためのコンパクトな住宅である。建物は3Mグリッドを基準にして計画されている。要求された8部屋を確保しながら、部屋の狭さを感じさせず、かつ外部の広がりを享受するゆとりのある住宅を目指した。そのために、各部屋の間仕切り方と室内外の連続性を単純な構造計画で実現している。言い換えると、構造体がそのままプランを形成し、室外に対しても流動的であり、室の内側の論理と外に対する論理を同時にかなえる構造形式を追求した。

 建物は二組の十字の壁が水平力を負担し屋根を支えている、この壁が室内の連続性を保ちながら八つの部屋を形成している。各室は引戸で間仕切られているが,戸袋をRC壁の中に打込むことで壁の両面をRC壁のまま見せ、そのことで引戸が見えないことで、よりワンルーム的な連続性が感じることができる。
  建物周囲は50角のスチール柱で軸力を負担し、この細い柱をサッシの方立てに組み込むことで構造体の存在感の希薄化を計っている。引戸のサッシで周囲を開放的なつくりとしながらも、建物の2つの角にはランマ付き独立壁を配置しプライバシーや開放度の調整をしている。
 
 コンクリートの素材感から重量感を消去し、必要最小限の面積で抑えられた各室に、意識的、視覚的な開放感、連続感をもたらしている。
 床、壁、屋根という建築の基本要素の構成のみで豊かな住空間を目指した最小限住宅である。構造体の配置のバランスのみで、建築内外の空間と生活を秩序づけようとした。
(藤本寿徳)

 

 

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