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2008年 7月6日
世の中には、建築の素人がセルフビルドで建てた魅力的で奇妙な建物がある。有名なところでは、郵便配達夫シュバルの家。30年をかけ配達途中に拾い集めた石で作り上げた「シュバルの理想宮(フランス)」や ロスアンゼルスのワッツというスラム地区でやはり30年をかけ、拾ってきたビンやタイルでサイモン・ロディアが作りあげた「ワッツタワー」など。二つとも文化財の扱いを受け観光名所になっている。検索したら簡単に写真にたどりつけるでしょう。
日本でもそういう事例は結構聞くが、現在では取り壊されてしまったものも多い。そういう建築ばかりを紹介するような書籍もあるのだが、下の写真の「Treehouse(木の家) 」(命名者=自分)は今まで書籍などで紹介されているのを見たことがないので、自分が第一発見者だと思い込んでいる。8年前偶然「発見」した。
家の中央に木が生えている、究極のツリーハウスである。近くによって、注意深く観察すると、建物の周囲はベニヤやサッシなどの大きさもバラバラ、貼り方もバラバラ、セルフビルド特有の匂いをプンプン漂わせている。大抵この手の制作者は変わり者と相場が決まっている。いきなり質問をしようものなら瞬時に切り捨てられる危険が高い。
運良く、建物の向かいのクリーニング屋さんが開いていたので、近所の事情にも詳しいだろうとの期待を抱きお店に入って質問してみた。
ツリーハウスの横に住むお爺さんが、木を囲むように小屋を作ったのが始まりで、材料は最初から拾ってきたもので作られたようだ。当初は植物の温室のような小さな小屋であったが、時間をかけそれは上へとどんどん大きくなり、ついには写真の高さまで達したらしい。どんな人ですか?と問うたところ、普通のお爺さんですよ。元気ですし声をかけてみたら。とニコニコしながら期待はずれの答えが帰ってきた。半信半疑である、このような物を作れる人が普通であろうはずは無いのである。普通にこれを作られては設計者としての自分の立場を失ってしまう。よって直接取材にはいまだ至っていない。
奇妙なセルフビルドであればなんでもいいというものではない。このツリーハウスは美しい。
(2010年5月追記)
本当に残念ながら、既に取り壊されてしまいました。 |
17:41, Sunday, Jul 06, 2008 ¦ 固定リンク
木村家住宅(徳島県三好市(旧)東祖谷村)
重要文化財といっても個人所有で現在も使われている農家も多い。この木村家も個人所有である。木村さんの敷地内にお邪魔してご挨拶して見せていただくことになる。敷地内の大銀杏が立派、建物同様、樹齢300年らしい。ちいおりのすぐ近くにあるのだが、ちいおりも、この木村家とほぼ同じつくりだと考えてよい。120平方メートルと広い農家である。村内にあった武家屋敷を移築し農家に改築したもの。
ちょうど昨年屋根の葺き替えが終わっているので綺麗な状態が見れた。23年ぶりの葺き替え、20年に一度葺き替えるぐらいがちょうどいいらしい。岡山県の8人の職人によって5ヶ月の工期をかけ1750束の茅(1束=10kg前後)が葺かれた。
縁側にとりついているのは「前便所」。通常厠は別棟のことが多いし、家の中心でしかも南側の方位がいい縁側に便所を据えるのか不思議になる、ちいおりと四国民家村の祖谷の農家には無いかたちである。
祖谷の農家では子世帯のオモヤと親世帯のインキョとが、2棟が並んでひとつの敷地に建つ伝統がある。四国民家村でも、2棟が並んだ祖谷の民家をみることができます。この木村家では、建物向かって右側に現在のお宅が配置されています。
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10:01, Sunday, Jul 06, 2008 ¦ 固定リンク
旧道面家住宅(島根県吉賀町(旧)六日市町)
重要文化財の民家は、いきなり現地に行っても公開されていないことも多々あるが、(事前に教育委員会に連絡してお願いすれば可能なことも多く、この道面家も内覧は可能)訪ずれた日は偶然、ご近所の老人会の方が手入れをされていたので中を拝見できた。月に一度、茅葺き屋根のためにかまどに火を入れ屋根をいぶしたり、周囲の除草をしている。11月から屋根の葺き替えを行う予定とのこと。47平方メートルの小さな農家。
じっと座って当時の生活を想像してみる。周囲は綺麗な田園地帯。窓は無く暗い、開口が小さいのは雪深い石見地方の地域性だと思う。タタキ、柱梁、建具、土壁、茅葺き屋根からなるシンプルさがいい。そしてシンプルな平面から伝わってくるものは大きい。かつての生活を想像すること、そして人々が力強く生活した証を確認することが民家探訪の魅力である。周囲の田畑や山の景色は300年前とほぼ同じである。
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09:22, Sunday, Jul 06, 2008 ¦ 固定リンク
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