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2007年12月18日
不動産屋さんには、我々が探している土地のイメージがなかなか伝わらず苦労しました。普通、家を建てるからには平坦な宅地で、電気、水道も完備している土地だと思うのが普通なのでしょう。平田さんの希望する、風景のいい所で周りに人家が少なく自然に恵まれている所であったら、かなりのデメリットがあっても構わないという要望に、相手は不信感も抱きながら、なかなかまともに取り合ってもらえなかったようです。当初案内していただいた数カ所は、サプライズを感じない普通の土地でした。
平田さんは、さらに粘ってなんとか不動産屋さんに思いを伝えたところ、相手も、もうあきらめ半分で、最後、使いようの無い土地があるけどそこまで言うなら見てみる?といったニュアンスで紹介されたそうです。しかし、その土地を一目見るなり気に入りました。その後、様々な面から検討を加え、この土地を購入することとなりました。
*1150平方メートル(350坪)の土地が350万円と坪1万円の手頃な値段。
*高速道路のICからも車で10分と近く、会社までの幹線道路からちょっと入った便利な場所である。
*昭和40年までは畑と田として使われていたが、その後は耕作放棄状態が長く続く。地目は雑種地と畑
*市街化調整区域でなく建築が可能である。(都市計画区域内、区域区分非設定、用途地域指定無し)
そのような土地でした。
デメリットとして
人の背の高さを超す笹薮(スズタケ)に覆われていて敷地の全体像が見えない。
水道、電気とも来ていない。
敷地が微妙に接道していなくてそのままだと建築できない。(道路占有許可が簡単に認められた)
「八軒屋の家」を手がけた井上建設の八木さんにも土地をみてもらいました。
造成と水道引き込みにかかる値段を見積もりしてもらったところ、敷地の笹を鋤き取り、整地する費用がおおよそ60万円。水道を350mかけて引き込むのに180万円必要ということになりました。電気の引き込みは電力会社に負担してもらえるので、約600万円で、350坪の広い土地を購入できる計算になります。
購入頃の敷地写真です。(写真クリックで拡大されます)
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21:09, Tuesday, Dec 18, 2007 ¦ 固定リンク
クライアントである平田さんご夫婦と初めてお会いしたのは、2005年12月18日。ちょうど2年前の今日のことです。
状況として、
*現在福山市内のアパートが,道路工事の為近い将来立ち退きになるから引っ越しを考えはじめたこと。
*トータルの予算で2500万円程度であるが、予算内の福山市内の新築、中古マンションを見て回ったが納得がいかないこと。
*「弥高山の家」のシンプルさに特に惹かれたこと。
*ローコストでも生活していく自信があること。
*現在土地を購入してないが、一軒家を 建てれる可能性があるか?
という相談でした。
ご夫婦とも岡山県出身のため、福山という土地に特別こだわりがないこと。ご主人の会社が井原市にあるということで可能性を感じました。
予算からすると少し厳しいかもしれないが、いっその事、まだ土地が安いであろう場所がたくさんある隣の井原市の里山の土地を探すことを提案しました。美しい里山や広葉樹の森がたくさん残っていることは日頃から知っていました。価値観を変えれば市中心部よりも魅力的な場所は多々あります。
実際に「弥高山の家」「辺名地の家」も見てきた二人と、ローコスト住宅の厳しさと、それが少しの工夫で乗り越えられる事。田舎であることの生活の豊かさと不便さについて多くの話をしました。
ファッションやデザインセンスが洗練されていて僕などは及ばない二人ですが、デザインの根本の考えで多くの共通した価値観を感じました。予算に対して若干の不安もあったのも事実ですが、一貫して家を持つ夢に僕も引き込まれていきました。
仮に土地があったとしても予算2500万円で住宅をつくるのは難しいご時勢です。しかし、土地が充分広くて近くに燐家がなく、周辺環境から干渉を受けない土地であれば、とても小さい平屋の建築物(構造物)を予算内でつくることは物理的に可能と考えたからです。たとえそれが、倉庫や駐車場のような建物にしかならなくても「住む」という平田さんの強い意思さえあればなんとかなるものです。
地元の不動産屋さんに飛び込み,平田さんの土地探しが始まりました。 |
16:45, Tuesday, Dec 18, 2007 ¦ 固定リンク
福山や尾道からは県北部に向かって国道313、182、184号線などがありますが、福山に来た当初からその国道沿いの農村部、山間部にある集落の美しさに惹かれていました。
道路の左右の土地の低い部分には水利のために田や畑があり、人は田畑に譲るように1段高く上がった場所に居をかまえます。斜面に建つそれらの農家は周囲の林や畑と一体となった美しい集落の姿をしていて、斜面下の道路からは、それら全てが一体となった美しい住環境が一望できます。
一目で茅葺きと判る急な勾配屋根は今ではトタン張りと姿が変わっていても、とても景色と調和しています。昔、篠原一男が「民家はきのこである」と表現しましたが、まさに自然の中から自然と生えてきたかのような調和を感じます。木造瓦葺き2階建ての住宅の屋根とは違った素朴な美しさを感じています。
農家の周りの雑木林は広葉樹が占め、杉、檜の針葉樹系の植林にはない季節ごとの色鮮やかさを楽しませてくれます。梅雨前の新緑の季節は生命感にあふれています。段々畑の石積みは昔は一つ一つ人の手で積み上げたのだろうと思いますが、古い石積みは苦労や人々の思いが詰まっているからこそ美しく感じます。
その頃に気付いたことなのですが、家の周囲だけでなく雑木林の足下の雑草刈りがちゃんとされていることに感心しました。自分の敷地内だけでなく、それ以外の場所も手入れがされていることが美しく見える理由です。手入れのされていない荒れ放題の山は美しくないものです。
県北の山間部出身の複数の知り合いから、山の手入れについてヒアリングしたところ、地域によって呼び名はいろいろあるのですが、「山普請-やまぶしん」という新興住宅地だと溝掃除や公園掃除にあたる地域の住民全員が参加する半ば強制的な草刈り作業があるのだそうです。地域の共同体の力が美しい里山をつくっていることを学びました。
小さい集落を形成しているエリア。なぜか1軒だけが存在するエリア。あの山の上にはどうやって行くのだろうと不思議になるような、険しい山の頂きに点在する「天空の集落」。集落や農村といっても、いろんな集落の形態があります。それらには共通して豊かな土地の「気」を感じさせます。日当りや風通し、山や川との関係から先人達が無意識の中にも選びとってきた土地利用の美しい結果です。
そんな山の景色を見るたびに、「このような敷地で農家を設計したい。」「茅葺き農家を改築して離れとして現代建築をつくりたい。」というような思いを募らせてきました。
一般的には農家や農村と現代建築はミスマッチと思われがちですが、僕は逆にこの自然や田畑、石積みなどの人々の努力の上にある美しさ、不便さをも巻き込みながら、利便性を追い求め続ける都市部にはない生活の豊かさにあふれた現代建築をつくってみたいと思っています。
もうじき完成する「里山の家-井原」はそんな思いが詰まった家です。そこでは家単体の設計内容だけでなく、敷地にまつわる話も僕にとっては意義深く感じています。
この「里山の家-井原」の土地の選択はかなり特殊な事例だと思います。僕の理想でもあります。そこで引き続き建設までのいきさつを紹介していこうと思います。
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15:35, Tuesday, Dec 18, 2007 ¦ 固定リンク
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